01.22.10:08
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02.19.11:21
名もなき物語
このお話は嘘のような本当のお話。
誰もが一度は夢見た、空の上のずっと遠い世界のお話。
遠いけど近く毎晩現れる世界。
みなさん、今まで感じたことはないでしょうか?確かにそこに在ったはずの世界が、朝靄に溶けてなくなってしまうあの感覚、残念でしょうがないあの朝。その世界を一日中、ふと気がつくと考えて頭の中で追いかけたことはないでしょうか?
今からお話しする世界は、そんな儚くも貴い世界のお話です。
始まりの朝
あれはある晴れた夏の日だった。僕は暑さと猛烈に迫りくる虚脱感と戦っていた。
僕は十三歳。遊び盛りの中学一年生だ。表では子供の楽しそうな笑い声が聞こえる。その笑い声にイライラを感じていた。それというのも、僕は夏休みに入ってから引越しの荷解きにあけくれ、何もしていなかった。
引っ越してからというもの近所には友達もいない。前の学校の友達達は部活に明け暮れているのであろう、何の音沙汰もない。
夜な夜な考えるのは、あの悔しいみんなとの最後のサッカーの試合だ。
「一年生大会」雨の中新しいチームでやっと一丸となってがんばれた試合だ。水はけも悪いグラウンドでみんな泥だらけでボールを追いかけた。決勝には進めなかったがやっとチームとして成り立ちスタートしたのだ。それなのに・・・。
「みんな、楽しくサッカーやっているんだろうなぁ。それなのにおれは・・・。」
毎晩毎晩意味を成さない日常に憤りを感じながら、頭の中で繰り返し、繰り返し、理想の夏休みを空想し、その世界に逃げ込んでいたんだ。
君もこんな経験無いかい? 今置かれている状況がほんとの世界だと感じられず、自ら頭の中の世界を現実に引き寄せてしまうことが?
確かにここ数日間は空想だったんだ。だが、その日はまったく違うものだったんだ。
頭の中の漠然とした世界ではなく確かにそこに在り、そしてそこにいたんだよ。
あ、ちょっとまってね、頭がおかしくなったわけでも、現実逃避しすぎた結果、現実
と非現実の区別がつかなかったわけでもないんだよ。
その日は何かおかしかったんだ。
いつも通りベッドに入り言いようのない日常について考え込んでいた。堂々巡りにあーでもない、こーでもないと想い耽っていると、急に奇妙な現実とのハザマに落ち込むような感覚に襲われた。
ベッドに沈んでいくような感覚。底なし沼にはまって身動き取れないような感じだ。
落ちるとこまで落ち、ベッドに自分の姿がなくなった頃、急に視界が変わった。
僕はしんでしまったのか?
続く・・・